以前の記事で胸のトレーニングでしっかりと効かせるための方法について解説しました。
マッスル・コントロールや予備疲労法など、全ての部位に応用できる効かせるためのコツについても解説していますので、未読の方は是非ご一読ください(⇒参照記事)。
そして前回は脊柱起立筋群と僧帽筋を鍛えるコツについて解説しました(⇒参照記事)。
今回は難関でもある広背筋の鍛え方について解説したいと思います。
【筋トレ初心者】背中トレのコツ―広背筋を鍛えて逆三角形を作る
広背筋は背中の広がりを作るうえでとても重要な筋肉です。
広背筋を鍛えることで、下背部から脇の辺りに向かって逆三角形のボディラインを形成することが出来ます。
しかし、僧帽筋などと同様に、背面にあるので鏡で見たり自身で触れながら行うのが難しいので、効かせる難易度はとても高く、中々筋肥大せずに悩んでいるトレーニーも多いことでしょう。
広背筋。背部を広く覆っている筋肉なので、この筋肉がしっかり鍛えられているのといないのでは、見た目の印象が大きく変わる。しかし、面積は広いが薄い筋肉なので、背中の厚みにはそれほど寄与しない。薄いので体積は三角筋や大胸筋に及ばないほどである。
僧帽筋(中部と下部)は効いてる感はなくても、とりあえず肩甲骨が寄っていれば刺激はされています。
ところが広背筋の場合は、刺激を効いてるかどうかで判断するしかなく、それは初心者にとってはかなりの関門です。
だから解剖学を大まかでも良いので把握し、筋肉をイメージしながら鍛えるのが大事です。
だいたいの起始部と停止部(筋肉の付着部の始まりと終わり)を覚える。起始部と停止部を離しては近づける…という筋トレの基本をしっかり押さえないとうまく効かせられないので、イメージは重要。この図だとDをいかにA~Cから遠ざけて、DをいかにA~Cに近づけるかを考えて動作する。
広背筋はとても面積の広い筋肉です。
僧帽筋のように筋繊維の方向によって明確に上部・中部・下部と分けられているわけではありませんが、広背筋上部と下部に分けてトレーニングしている方が多いように思います。
大まかに上のほうと下のほう、という感じで大丈夫です。
主な働きは肩関節の内転と伸展で、内転を行うと上部に、伸展を行うと下部に刺激が入りやすいと言われています。
内転動作の主な種目は懸垂やラット・プルダウン、伸展の主な種目は股関節に向かって引くロウイングです。
上から引く種目と下から引く種目、出来たら前から引く種目も行って、あらゆる角度から刺激を入れることで、バランスのとれたカッコいい逆三角形の体を作れると思います。
左が肩関節の外転でサイドレイズなどの動き。対して右が内転で、広背筋だけでなく大胸筋にもこの作用がある。上から引くか下へ押すかで、どちらがより動員するかが変わる。
上腕を後方へ挙げる動作を肩関節の伸展という。前腕ではなく上腕を後方へ挙げる動作なので、トレーニングではいかに肘を後ろへ引くかが重要。前腕を意識するとアームカールのような単なる肘の曲げ伸ばしなりがちなので注意。
広背筋の効かせ方は、実は大胸筋のものと似ています。
ブリッジは組みませんが、肩をすくめずに動作を行い、重りを挙げた時にしっかりと胸を張ることです。
肩を落として(下制して)行うことで僧帽筋上部へ刺激が逃げるのを防ぎ、胸を張ることで収縮感が得られやすくなります。
普段あまり意識することのない筋肉なので、意識して大きく動かすのが大事です。
可動域をなるべく大きくとるというのは、どこの筋肉でも重要なポイントですが、背中の筋肉はより一層その意識を強くしなければなりません。
使い慣れていない筋肉をチョコチョコと動かしても、動画などで見てみると自分が思っている以上に筋肉が動いてくれてないのが分かるはずです。
広背筋へ効かせたいなら、胸を張り体をなるべく反らさないと収縮感が得られない。懸垂で広背筋に効かせるのではなく、体を挙げること自体が目的となってしまうと、腕のトレーニングになってしまう。
それから握力を補助するためのパワーグリップや、リストストラップはあったほうが良いでしょう。
背中の筋肉よりも先に握力が限界に来るのを防ぐ…というのもあるのですが、背中に効かせるうえでもパワーグリップなどは有効です。
重りを強く握りこんでしまうと、前腕に強い力が入ってしまい、意識が背中と前腕に分散してしまいます。
パワーグリップなどを使えば、意識を背中の筋肉に集中することが出来ますので、懐と相談して購入しておくとワンランク上の背中のトレーニングが出来ると思います。
トップレベルのボディビルダー達もパワーグリップなどのギアを愛用している。たとえ軽い重量であっても、前腕への負担が少ないほうが効かせやすいのは間違いないので、初心者もあったほうが良い。
まずは代表的な種目である懸垂、もしくはラットプルダウンのコツをお伝えしようと思います。
パワーグリップなどの使用の有無に関わらず、サムレス・グリップで握り、極力、前腕の関与を減らすようにしましょう。
握りこむのではなく、指の付け根の辺りにバーを引っかけるようにして、動作を行うようにします。
親指抜きで握るサムレス・グリップ。握りこむのではなく、四本の指をフックのように引っかけるようにして行うことで、前腕の関与を減らせる。
バーを握ったらまずは肩を落として、腕を少し外側へ捻り、親指が自分側へ向くようにします(リバース・グリップの場合は捻らなくて大丈夫です)。
広背筋は肩を内旋させる働きもあるので、外側へ捻る(外旋)ことでストレッチされ、より効かせやすくなります。
そして引く時は、広背筋の神経の関係で、小指側で引くようにすると広背筋が動員されやすくなります。
広背筋だけをピンポイントで狙って引くというよりは、肩関節の内転と一緒に肩甲骨も内転させて(肩甲骨を寄せる)、背中の筋肉を沢山使ってよく動かすようにします。
大円筋を鍛えたい場合は肩甲骨は寄せないほうが良いですが、初心者の場合は肩甲骨を動かして僧帽筋の力も使って引いたほうが、背中の筋肉を意識して引きやすいと思います。
バーが顎を通過出来ないなら重量を下げる。重すぎると結局、使いやすい筋肉(腕)ばかり鍛えることになってしまう。見栄は張らず、丁寧な動作で筋肉を大きく動かすことを心掛ける。
僧帽筋の時と同じように、手ではなく肘を後ろに引くようにしましょう。
肘の曲がりが強くなると腕の力で引いてしまうことになりますので、とにかく肘を後ろに引くように意識し、前腕はなるべく意識しないようにします。
肩甲骨がしっかり動いていれば、引ききった時に背中が反る(胸を張る)形になっているはずです。
腕の力で引いてしまうと猫背のように背中が丸まってしまうので、顎も上げてなるべく背中が反るようにしましょう。
懸垂の時に足を後ろで組むと、体を反らしやすくなり骨盤と上腕(起始と停止)が近づくため、より収縮しやすくなる。体を持ち上げると同時に顎を上げると、さらに体が反りやすくなる。顎を引いてしまう人は多いので注意。
オーバー・グリップ(順手)だと収縮感が得られやすくなり、リバース・グリップ(逆手)だとストレッチされやすくなります。
この特徴は広背筋のどの種目でも一緒です。
オーバー・グリップで行う場合は、より収縮感を得やすくするために手幅を広めにし、リバース・グリップで行う場合は、よりストレッチさせるために手幅を狭めにしたほうが、それぞれの特徴を活かしやすいので行いやすいと思います。
骨盤と上腕を出来るだけ離すことで、起始部と停止部が離れてストレッチされる。ストレッチ刺激を得たいなら手幅は狭いほうがいい。広背筋には肩の内旋作用もあるため、逆手に持つことで肩が外旋され、よりストレッチされる。
もう一つ、リバース・グリップで行うと肩関節の内転と一緒に伸展も起こりやすくなり、かつ上腕二頭筋も動員される割合が増えるので、高重量が扱えます。
強い刺激を与えたい場合はリバース・グリップで行うのが良いでしょう。
ただし、ロウイング系の種目では肩関節の伸展をメインに行います。
懸垂やラットプルダウンでは内転を行いやすいというのが特徴ですので、ロウイング系の種目も行う場合は、懸垂やラットプルダウンをオーバー・グリップで行ったほうが、それぞれの種目の特徴を活かしやすいと思います。
マンネリを感じて来た時に、グリップや手幅を変えてあげると良いと思います。
リバース・グリップで行うと、オーバー・グリップの時よりもお腹側へ引きやすくなるので、肩関節の伸展が起こる。そのかわり上腕二頭筋の向きが負荷のかかる方向と合うので、上腕二頭筋もよく使われる。初心者で懸垂の回数がこなせない方は、リバース・グリップで上腕二頭筋の力も借りて行うようにすると、オーバー・グリップよりは回数がこなせるのでやってみるのも良いだろう。
今度はもう一つの代表的な種目であるロウイングのコツをお伝えしようと思います。
ダンベルのものとバーベルのものがありますが、初心者はバーベルのほうがやりやすいと思います。
ダンベルで片手ずつ行うと、可動域が広くとれるうえ、片手で上体を支えながら行えるので腰への負担が少なく、高重量も扱いやすくなるのでいいことずくめです。
しかし初心者にとっては左右差が生まれやすく、体力的にも辛い種目となるので、最初はバーベルで行うと良いと思います。
バーベルで少しずつ慣れてきたら、ダンベルのロウイングも取り入れていくと良いでしょう。
ワンハンド・ダンベルロウイング。片手ずつ行うと、床に着く寸前まで下ろすことでストレッチ刺激が得られ、バーバルではお腹にバーが当たってしまう箇所よりもさらに引いて収縮させることが出来、それでいて腰への負担も少ない最強種目。しかし、体力の消耗が激しく、初心者においては慣れない背中のトレーニングで左右差も生まれやすいのが難点。
ロウイングでは肩関節の伸展動作をメインに行います。
グリップはリバース・グリップ(逆手)のほうが伸展を行いやすいだけでなく、バーベルを下ろした時にストレッチもされるので、最初はリバース・グリップのほうが広背筋を意識しやすいかと思います。
僧帽筋を鍛える時はみぞおちの辺りに向かって引くことにより、僧帽筋の真下にバーベルが来て僧帽筋に刺激が入りますが、広背筋を鍛える時は股関節に向かって引きます。
股関節に向かって引くと、バーの軌道が床に対して垂直ではなく斜めになりますが、股関節に向かって引くことで肩関節の伸展が起きて広背筋に刺激が入ります。
ベントオーバー・ロウイング。腰ではなく体をしっかりと股関節から曲げて、バーを股関節に向かって引く。軌道は重力に対して真っ直ぐではなく、斜めもしくは弧を描くような軌道になる。僧帽筋に効かせる「みぞおちの辺りに向かって引くもの」と混同しないように注意。
懸垂の時と同じように、小指側に力を入れながら肘を後ろに引くようにしますが、リバース・グリップは肩が外旋した状態なので、下ろす時にそれ以上外側へ腕を捻る必要はありません。
むしろ引く時に内側へ捻る(内旋)ようにしたほうが、引き切った時に収縮感が得られやすくなり、効かせやすくなると思います(バーベルだと僅かな捻り具合になりますが)。
ダンベルで行うロウイングなら、自由に捻ることが出来ますので、より内旋と外旋を意識して行えます。
内旋と外旋をしっかりと行うと、より効かせやすくなるので、背中のトレーニングに慣れてきたらワンハンド・ダンベルロウイングも取り入れていくと効果的です。
注意点は、下ろす時は外旋させて手の平が前側を向くようにし、挙げる時は内旋させて手の平が後ろ側を向くようにすることです。
下ろす時に内旋させて挙げる時に外旋させる方をよく見かけるので、間違えないように注意しましょう。
人間の体は両手で同時に行うよりも片手ずつ行ったほうが強い筋力発揮が出来るため、ダンベルで行うならワンハンドがオススメ。片手で体を支えられるので腰への負担も少なく、可動域も広くとれる。ベンチで行うよりも何かに捕まって体を起こし気味で行ったほうが、より強いストレッチ感が得られる。
ベントオーバーロウイングは、体の前傾角度にも気を付けましょう。
僧帽筋を狙う場合は、なるべく前傾させたほうがダイレクトに刺激が入りますが、広背筋を狙う場合はだいたい45度くらいを目安に前傾させましょう。
そして前傾させたら、お尻や腿の裏の筋肉でしっかりと重りを支えるようにします。
腿の前側で支えようとすると膝の曲がりが強くなり、膝が邪魔でバーベルを下ろしにくくなるので、膝ではなくしっかりと股関節から曲げて前傾させます。
膝はあまり曲げずに股関節から曲げる。体を前傾しすぎると、床に対して平行にバーベルを動かさないと肩の伸展が起こらなくなってしまうので、重力が関係なくなってしまう。前傾のし過ぎ、起こし過ぎには注意。
手幅はリバース・グリップで狭く握ると、よりストレッチされますが、上腕二頭筋への負荷も強くなります。
とにかく強い刺激を入れたい場合は狭く握り、上腕二頭筋への負荷を増やしたくない場合は広めに握るのが良いでしょう。
そしてやはり、肩をすくめずにかつ肩を後ろに引いた状態で動作を行うのが重要です。
肩をすくめると僧帽筋上部へ刺激が逃げ、重りを下ろすのと同時に肩も前に(床方向へ)出てしまうと、刺激が広背筋から抜けてしまうのでベンチプレス同様、肩の位置はキープしたままにします。
バーを下まで下ろした時でも肩を前に出さない。前に出すと広背筋から刺激が抜け、脱力状態になってしまうので効果が下がる。あえて肩を前に出してストレッチさせるテクニックもあるが、初心者のうちは難しいので肩の位置のキープを心掛ける。
それから、広背筋に限ったことではないですが、フリーウエイトでしっかりと効かせられるようにしておいたほうが良いです。
マシンのほうが収縮感を得やすいので、その分、効いてる感覚も得やすいのですが、だからといって筋肉に強い刺激が入ったかどうかは別問題です。
効いてる感ばかりを重視してしまうと、収縮種目ばかりになってしまいかねません。
やはり苦手な部位、効かせるのが難しい部位ほど筋肉は大きく動かしたほうが良いので、フリーウエイトでなるべく可動域を広くとって動作を行うことをオススメします。
フリーウエイトでしっかりと効かせられるようになれば、マシンでもより効かせられるようになるはずです。
マシンで効かせられるようになっても、フリーウエイトでも効かせられるようになることはあまりありません。
収縮した時に一番負荷がかかる種目を収縮種目という。ギュッと力を入れて収縮した時に強い負荷がかかるほうが、効いてる感じは強くなる。初心者が効いてる感覚を得るためなら良いかもしれないが、その感覚だけを重視しすぎるとマシンばかりになりがち。フリーウエイトのほうが筋肉への刺激は強くなるので、フリーウエイトを優先して行うのがベター。
今回は広背筋の効かせ方のコツについて解説しました。
広背筋は効いてる感覚を得るのが難しいため、最初はとにかく練習あるのみです。
広背筋のトレーニングの日はもちろん、広背筋のトレーニングをしない日でも、エアーでトレーニング動作を行い、ストレッチされる感覚や収縮される感覚を養うのが良いかと思います。
コツを掴むまでは筋肥大させるのがとても難しい部位ですが、諦めずに数をこなしていくことが大切です。
今日も筋トレライフを楽しみましょう。
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